東京都の中古マンションは下がり始めたのか|外国資本と金利で読む2026年
更新日:10月5日
東京都で新たに売り出された中古マンションの平均価格は8,955万円。
実際に成約した物件の平均は6,826万円。
2026年8月、売り手の期待と買い手が受け入れた価格の間には2,129万円の開きが生じた。
同じ住戸の値下げ幅ではなく、物件構成も異なる二つの平均である。
それでも、新規登録価格が前年同月比16.9%上がる一方、成約価格は0.4%下がった事実は重い。
高値で売り出す市場と、実際に売れる市場が別々に動き始めている。

東京都中古マンションの新規登録価格・成約価格推移。出典:東日本不動産流通機構(画像内の実績率は、異なる集団の平均を比較した参考値)
では、マンション高騰は終わるのか。2026年の外国資本の動き、金利、在庫、都心の成約状況を重ねると、単純な暴落よりも「選別の始まり」という姿が見えてくる。
2026年の外国資本は、日本から撤退していない
外国資本の動きを見るとき、まず事業用不動産と分譲マンションを分ける必要がある。
CBREによると、2026年第1四半期の日本の事業用不動産投資額は2兆430億円で、前年同期比2%増の第1四半期として過去最高だった。海外投資家による1,000億円超の大型取得もあり、住宅・物流・ホテルへの投資額はいずれも前年同期比で2桁増となった。
同社のアジア太平洋投資家調査でも、東京は海外投資家が選ぶ投資先の1位を7年連続で維持した。賃料上昇への期待、安定したキャッシュフロー、海外と比べた調達コストの低さが評価されている。
つまり、金利が上がったから外国資本が一斉に東京を売っている、という状況ではない。むしろ、賃料を上げられるオフィスやホテル、運用型住宅には資金が入り続けている。
分譲マンションでは「外国人が価格を全部押し上げた」とは言えない
一方、国土交通省が2026年9月15日に公表した登記分析は、個人向けマンションについて違う景色を示す。最新の調査対象は2025年までであり、2026年のリアルタイム統計ではない点には注意が必要だ。
2025年に国外住所の者が取得した新築マンションの割合は、東京都で2.5%、東京23区で2.8%、都心6区で5.9%だった。港区は5.0%で、2024年の9.7%から低下した。都心6区も2025年上半期の公表値6.7%から通年では5.9%となった。

国外に住所がある者による新築マンション取得割合。出典:国土交通省(2026年9月15日公表、調査対象は2025年まで)
さらに、中古マンションでは国外居住者の取得割合に直近の増加傾向は見られず、都心6区で2億円以上の高額物件に購入が特に偏る傾向も確認されなかった。
氏名から外国人と推定される取得割合も、都心6区では前年より低下した。
外国資本の影響をゼロと見るのも、価格高騰の主因をすべて外国人に求めるのも適切ではない。ANZENは、外国資本は市場全体の購入戸数を支配する存在というより、希少な都心物件で上限価格を作りやすい「限界価格の買い手」だったと見る。少数でも、競合する物件が限られれば周辺の値付けに影響するからだ。

なぜ都心マンションはここまで高騰したのか
第一は、土地・建築費・人件費の上昇である。
新築の原価が上がると、新築価格だけでなく、代替となる築浅中古の価格も引き上げられる。CBREの2026年調査でも、建設費と労務費の上昇が投資家の最大の懸念に挙がった。
第二は、長く続いた低金利と金融機関の積極的な融資である。
借入コストが低ければ、同じ賃料や同じ世帯収入でも高い価格を支えられる。国内の富裕層、共働き高所得世帯、法人、海外投資家が同じ都心の希少物件を競った。
第三は、港区を含む都心の供給制約である。
駅近、眺望、管理状態、再開発の恩恵といった条件を同時に満たす住戸は増やしにくい。新築供給が絞られるなか、条件の良い中古へ需要が流れた。
第四は、賃料上昇と円安である。
賃料が上がれば投資採算は改善し、外貨を持つ買い手には円建て資産が相対的に買いやすくなる。この力が、都心の一部で「前回の成約価格より高く出しても売れる」という期待を強めた。
なぜ今、成約価格と取引量が弱くなったのか
2026年8月の東京都では、成約㎡単価が前年同月比0.8%下落し、成約件数は1,562件で18.7%減った。
一方、月末在庫は28,082件で21.3%増えている。
ここから考えられる第一の理由は、金利上昇で買い手の予算が先に縮んだことだ。日本銀行は9月18日、無担保コールレート翌日物を1.25%程度にする方針を決めた。
適用は9月24日からであり、8月統計の直接原因ではないが、これ以前から進んだ金利上昇と追加利上げへの警戒は、買い手の借入判断に影響してきた可能性がある。
例えば1億円を35年間、元利均等・ボーナス返済なし、金利を全期間一定と仮定すると、月々の返済は年1.0%で約28.2万円、年2.0%で約33.1万円となる。月約4.9万円の差は、購入可能額や希望する広さを変えるには十分大きい。
これは手数料・税金を除く単純試算であり、実際の商品金利を示すものではない。
第二の理由は、売出価格の上昇が所得や賃料の上昇を先回りし過ぎたことだ。
売り手は直近の最高値を基準に値付けするが、買い手は毎月返済と周辺成約で判断する。両者の基準が離れれば、価格がすぐに暴落するより先に、売れない期間が延び、在庫が積み上がる。
第三の理由は、買い手が選べるようになったことだ。在庫が増える局面では、同じ価格なら駅距離、築年、眺望、管理、修繕計画に優れる住戸へ需要が集中する。条件の弱い物件は値下げしなければ動かず、希少な物件は高値を維持する。平均価格の方向より、物件間の格差が広がりやすい。
なお、REINSは2025年1月に成約登録の適正化に向けたシステム改修を実施しているため、成約件数の前年差には制度変更の影響が含まれる可能性がある。また、平均価格はその月に売れた物件の広さ・築年・価格帯でも動く。単月の下落だけで市場全体の転換を断定することはできない。
都心3区では、価格上昇と成約減少が同時に起きた
港区を含む都心3区の8月成約平均価格は1億4,175万円で前年同月比4.5%上昇し、成約㎡単価も246.81万円で4.1%上がった。ところが成約件数は154件で38.9%減少した。
価格だけを見れば上昇相場、件数だけを見れば急減速である。これは矛盾ではない。高額でも代替しにくい物件だけが成約し、一般的な住戸では買い手が価格についてこなくなれば、平均価格は高いまま取引量が減る。
ANZENは、今の都心市場を「高騰の終了」より「一律上昇の終了」と捉える。
再開発に近い、眺望が守られる、管理が良い、同じ建物内の売出しが少ないといった物件は粘る。一方、売出しが重なる物件や維持費が高い住戸は、金利と在庫の影響を早く受けると考える。
売却と購入で、これから見るべき数字
売却では、周辺の募集価格より、同じ建物または条件が近い住戸の成約価格、売却までの日数、価格変更の回数を見るべきである。高値を待つ場合は、管理費・修繕積立金・借入金利を含む待機コストも計算したい。
購入では、「相場が何%下がったか」より、その住戸に代替があるかを確認する。競合物件が複数あり、長期間売れていないなら交渉余地が生まれやすい。反対に、希少性が高く賃料でも支えられる物件は、全体の成約減少だけを理由に大幅な下落を待つと機会を逃す可能性がある。
金利が価格に伝わる仕組みは、関連記事「金利上昇は都心マンションに一律に効くのか?」でも整理している。
港区・都心周辺でマンションの購入や売却を検討している場合は、平均価格だけでなく、対象住戸の成約事例と競合在庫を合わせて判断したい。個別の相談はANZEN株式会社のお問い合わせ窓口へ。
参考資料・出典
確認日:2026年9月21日。事業用不動産の投資額と個人向けマンションの取得割合は対象が異なる。本文中の原因分析と今後の見通しは、公表事実を基にしたANZENの推測・見解であり、将来の価格を保証するものではない。挿絵は架空の建物を用いた概念表現である。



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