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タワーマンション節税はどう変わる?2024年の相続税評価改正と2027年の見直し

2 日前
読了時間: 13分


相続税評価は2027年、さらにどう変わるのか


「タワマン節税」。


一時期、相続税対策を考える富裕層の間で、この言葉が当たり前のように使われていた。


現金で持っていれば3億円は、相続税上も原則として3億円である。


しかし、その3億円で都心のタワーマンションを購入すると、相続税評価額が大きく下がることがあった。


特に、


都心。 新築。 高層階。 高額住戸。


こうしたマンションほど、市場価格と相続税評価額の差が大きくなりやすかった。


そこに銀行借入まで組み合わせる。


これが、いわゆる「タワーマンション節税」の基本的な仕組みであった。


しかし2024年、国税庁はマンションの相続税評価方法を大きく変更した。


そして2027年。


今度は「相続直前に購入した貸付用不動産」そのものに、さらに大きな見直しが入る予定である。


財務省の令和8年度税制改正大綱では、一定の貸付用不動産について2027年1月1日以後の相続等から新しい評価を適用するとしている。


タワマン節税は、そもそも何だったのか。


2024年の改正で何が変わったのか。


そして2027年、不動産を使った相続対策はどこまで変わるのか。


一度、整理してみたい。



そもそも「タワマン節税」とは何だったのか


ポイントは非常にシンプルである。


不動産には「売れる価格」と「相続税を計算する価格」がある。


例えば現金1億円を相続すれば、相続税評価額も1億円である。


ところが不動産の場合、相続税評価額は原則として市場価格そのものではない。


土地部分は路線価等。


建物部分は固定資産税評価額。


マンションであれば、その土地全体の評価額に敷地権割合を掛け、建物について固定資産税評価額を使って評価する。


その結果、


実際には2億円で売れるマンションなのに、相続税評価額は1億円を大きく下回る


といったことが起こり得た。


ここに相続税対策としての価値が生まれたのである。



なぜ「タワーマンション」が特に有利だったのか



マンションの土地は、一棟全体で共有している。


例えば500戸の巨大タワーマンションなら、数千㎡、あるいは1万㎡を超える土地があっても、一住戸あたりの土地持分は小さい。


一方、市場ではどう評価されるか。


30階。


40階。


50階。


東京タワービュー。


レインボーブリッジビュー。


角部屋。


プレミアムフロア。


こうした条件によって価格は大きく変わる。


しかし従来の相続税評価では、


「40階だから市場では5億円」


という価値が、そのまま評価額へ反映される仕組みではなかった。


国税庁自身も、旧評価では市場価格が考慮する「建物総階数」「所在階」などが十分に反映されず、市場価格と相続税評価額の大きな乖離につながっていたと説明している。


つまり、


市場では高層階ほど高い。 しかし税務評価では、その価格差ほど評価額が上がらない。


このズレこそが「タワマン節税」の源泉だったのである。



借入を組み合わせると、さらに効果が大きく見えた


ここでもう一つ重要なのが、


債務控除


である。


仮に3億円のマンションを購入する。


そのうち2億円を銀行から借りる。


相続時にマンションの市場価値が3億円でも、相続税評価額が仮に1億円だったとする。


一方、借入金2億円は債務として存在する。


極端に単純化すれば、


1億円の相続財産 -2億円の債務


という構図になる。


もちろん実際の相続税計算は他の財産や各種特例を含めて行うため、この通りになるわけではない。


重要なのは、


借金そのものが節税を生んだのではなく、「3億円で買った資産を税務上は大幅に低く評価できる」という差があったから効果が生まれた


という点である。



国税が問題視したのは「価格差」だけではなかった


転換点の一つとなったのが、


2022年4月19日の最高裁判決


である。


ただし、これはいわゆるタワーマンションそのものの裁判ではない。


相続直前に購入された賃貸不動産2棟を巡る事件であった。


購入価格は約13.9億円。


銀行借入は約10億円。


相続時の通達評価額は約3.3億円。


その結果、申告上の相続税額は0円となった。


これに対し国税側は鑑定評価約12.7億円を使って更正処分を行い、最終的に最高裁でも国側が勝訴した。


重要なのは、


市場価格と評価額が違ったことだけが問題だったわけではない


という点である。


最高裁は、購入と借入れがなければ6億円を超える課税価格があった一方、不動産購入等によって相続税が0円になったことや、相続税負担を減らすことを認識・期待して取引が行われた事情などを考慮した。


この判決によって、


「評価通達どおり計算しているのだから絶対に安全」


とは言い切れなくなった。


そして国税庁は、個別案件ごとに争うよりも、マンション評価そのものを見直す方向へ動いたのである。



2024年。「タワマン節税」のルールが大きく変わった



2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した居住用区分所有財産について、新しい評価方法が導入された。


対象は名前の通り、


タワーマンションだけではない。


一定の分譲マンション全般である。


新制度では、


築年数。


建物の総階数。


住戸の所在階。


敷地持分の大きさ。


などから、


「評価乖離率」


を計算する。


そして現在の相続税評価額が市場価格相当額に対して低すぎる場合には、


理論上の市場価格に対しておおむね60%程度となる水準まで評価額を補正する


仕組みとなった。


国税庁が制度検討時に示した考え方そのものが、


従来の相続税評価額 × 評価乖離率 × 最低評価水準0.6

というものである。



つまり「3億円を買えば1億円評価」の世界が難しくなった


非常に単純化した例で考える。


市場価格3億円。


従来の相続税評価額が1億円。


市場価格に対する評価水準は約33%である。


旧制度なら、この1億円という評価がそのまま使われるケースがあった。


しかし新制度では、


あまりに市場価格との乖離が大きければ補正される。


理論価格に対して最低評価水準60%を目安にするのであれば、3億円に対して1億8,000万円程度というイメージになる。


あくまで実際には国税庁の計算式によって評価乖離率を算定するため、「市場価格×60%」と単純計算する制度ではない。



それでも、

従来ほど劇的に評価額を圧縮することが難しくなった

ことは間違いない。



では、「タワマン節税」は完全に終わったのか


ここは少し誤解されやすい。


答えは、


「昔のような極端な効果は抑えられた。しかし、不動産による相続税評価の特徴そのものがなくなったわけではない」


である。


現金は1億円なら1億円。


不動産は現在でも税務上の評価方法によって計算する。


さらに賃貸物件であれば、


貸家。


貸家建付地。


などとして、賃借人の権利を考慮した評価が行われる。


一定の要件を満たす宅地なら、小規模宅地等の特例が使える場合もある。


例えば貸付事業用宅地等では、一定の要件の下、200㎡まで50%減額される制度が存在する。


したがって、


「不動産を持つことに相続上の意味がなくなった」


わけではない。


変わったのは、


「相続直前に高額なタワマンを買えば、それだけで大きく評価を落とせる」


という単純な戦略である。



そして2027年。次は「貸付用不動産」が変わる


ここからが今回の記事で最も重要な部分である。


2026年度税制改正大綱では、


一定の貸付用不動産の相続税評価方法を2027年から見直す


方針が示された。


対象となるのは、


被相続人等が相続開始前5年以内に、対価を伴う取引によって取得または新築した一定の貸付用不動産。


これについては原則として、


相続時の通常の取引価額に相当する金額


によって評価する。


さらに課税上の弊害がない場合には、


取得価額を基礎として地価変動などを考慮した金額の、


80%相当額


で評価できるとしている。


適用は、


2027年1月1日以後に相続等で取得する財産


からである。



2024年と2027年は、狙っているものが違う


ここは整理しておきたい。


2024年


対象は一定の居住用区分所有財産。


つまり分譲マンションの市場価格と相続税評価額の乖離を是正した。


2027年


対象は一定の貸付用不動産。


特に、


相続直前5年以内に購入・新築した不動産を賃貸し、評価差を利用する相続対策


を意識した制度となっている。


つまり政策の流れを見ると、


2024年:マンションという「商品」の評価差を修正 2027年:相続直前に不動産へ変える「行為」そのものへ踏み込む


という二段階になっている。



タワーマンションを買って「賃貸」に出す場合はどうなるのか

ここは2027年以降、実務上かなり重要になる。


例えば、


相続対策として3億円のタワーマンションを購入。


自分では住まず、第三者へ賃貸する。


その数年後に相続が発生した。


この場合、そのマンションは、


「マンション」であると同時に「貸付用不動産」


でもある。


2024年には分譲マンション評価の見直しが入っている。


さらに2027年以降は、一定の条件を満たす短期取得の貸付用不動産について新たな評価ルールが加わる。


つまり、


「高級マンションを買って貸せばさらに評価を落とせる」


という従来型の考え方は、今後さらに使いにくくなる可能性が高い。


ただし、新しい貸付用不動産評価とマンション評価通達との具体的な適用関係などは、実際の国税庁通達や個別条件を確認する必要がある。


2027年の相続対策を考える際には、税理士等による個別確認がこれまで以上に重要になる。



「5年」が非常に大きな意味を持つ


2027年ルールでもう一つ重要なのが、


5年


である。


相続開始前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を対象とする。


つまり、


亡くなる直前に現金を不動産へ変える。


高齢になってから急いで賃貸マンションを購入する。


短期間だけ保有し、相続税評価額を圧縮する。


こうした取引を狙い撃ちする構造になっている。


逆に言えば、


相続対策としての不動産は「直前に買う商品」から「長期的に所有・運用する資産」へ


考え方を変える必要が出てくる。


これは大きな変化である。



不動産小口化商品にも厳しいルール


さらに2027年の見直しは、現物不動産だけではない。


不動産特定共同事業契約や一定の信託受益権など、


いわゆる不動産小口化商品についても見直しが入る。


一定の契約に基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、


取得時期にかかわらず、通常の取引価額相当額で評価する


方針が示されている。


近年、


「数千万円単位で都心一等地の不動産を持てる」


「相続対策にも使える」


として富裕層に販売されてきた商品も少なくない。


2027年は、こうした市場にも影響が出る可能性がある。



これは実は「30年前にあった制度」に少し似ている


興味深いのは、日本では以前にも似た考え方の制度が存在したことである。


バブル期には、相続直前に土地を購入して評価差を利用する節税が問題となり、


相続開始前3年以内に取得した一定の土地・建物を取得価額で評価する制度


が導入されていた時期があった。


この制度は1996年度改正で廃止された。


国税庁の研究資料にも、その経緯が記録されている。


そして約30年後。


2027年から再び、


「相続直前に買った不動産は、昔から持っている不動産と同じようには評価しない」


という考え方が戻ってくる。


不動産を利用した節税と税制の「いたちごっこ」は、決して最近始まった話ではないのである。



2027年、不動産による相続対策はなくなるのか



ここも結論を急ぐべきではない。


不動産には依然として、


賃貸収入。


資産保全。


インフレヘッジ。


相続人への承継。


現金とは異なる税務評価。


など、様々な特徴がある。


小規模宅地等の特例など、一定の条件で大きな評価減が認められる制度も残っている。


したがって、


「2027年から不動産の相続対策は使えなくなる」


という理解も正しくない。


変わるのは、


税金を下げることだけを目的として、相続直前に不動産を購入する戦略


である。



高級タワーマンションの需要は落ちるのか

不動産市場として気になるのはここである。


六本木。


麻布。


虎ノ門。


三田。


湾岸。


数億円から10億円を超える住宅が珍しくなくなった。


その購入者の中には当然、


実需。


投資。


法人需要。


海外富裕層。


セカンドハウス。


など様々な層がいる。


相続税対策だけで高級マンション市場が成立しているわけではない。


したがって、


2027年の税制変更だけで都心タワーマンション価格が崩れる


と考えるのは飛躍である。


しかし、


「相続税評価が低いから買う」


という購入動機は明らかに弱くなる。


特に、


高齢富裕層による相続直前の高額賃貸不動産取得


には影響が出る可能性がある。


今後は、


節税商品としてのマンションより、


本当に資産価値のあるマンション


が選ばれる市場へ近づいていくのかもしれない。



これから重要になるのは「いつ買ったか」


かつてのタワマン節税では、


何を買うか。


どのくらい市場価格と評価額が離れているか。


が重要だった。


2024年からは、


築年数。


階数。


所在階。


土地持分。


まで評価に入るようになった。


そして2027年からは、


いつ取得したのか。


さらに、


何のために所有しているのか。 自宅なのか、賃貸なのか。


まで重要になる。


不動産相続対策は、


単純な「物件選び」ではなく、


保有期間を含めた資産承継計画


へ変わりつつあるのである。



タワマン節税とは、結局何だったのか


振り返れば、「タワーマンションだけに特別な節税制度」があったわけではない。


本質は、市場価格と税務上の評価額の差である。


その差が、

土地持分の小さい高層マンション。

高層階。

都心の高額物件。


で特に大きくなった。


だから「タワマン節税」と呼ばれたのである。


2024年。

その価格差へ補正が入った。


2027年。

今度は相続直前に取得した一定の貸付用不動産にも、通常の取引価額に近い評価を求める方向へ進む。


制度の流れは一貫している。


「実際には高い資産を、税務上だけ極端に安く評価する」ことを難しくする。

という方向である。



2027年は「節税の終わり」ではなく「短期節税の終わり」なのかもしれない

不動産を持つ意味そのものがなくなるわけではない。


むしろ、


長く所有する。


賃料を生む。


良い場所を買う。


資産価値を維持する。


次世代へ承継する。


という、本来の不動産投資の考え方が重要になる。


相続が近づいてから、


「現金を何に変えれば税金が下がるか」


と考える時代から、


「10年、20年先を見据えて、どの資産を家族に残すか」


を考える時代へ。


2024年のマンション評価改正。


そして2027年の貸付用不動産評価の見直し。


二つを続けて見ると、国が示している方向性はかなり明確である。


不動産は節税のために買うものではなく、資産として持つものへ。


タワーマンション節税を巡る時代は、


2027年にもう一つ大きな節目を迎えることになりそうだ。


※本記事は2026年10月19日時点で公表されている国税庁・財務省等の資料をもとに構成している。2027年からの貸付用不動産評価については、財務省「令和8年度税制改正の大綱」に示された内容を基に記載しており、具体的な適用判断については今後の国税庁通達等および個別の事実関係を確認する必要がある。相続税・贈与税については税理士等の専門家への個別相談が必要である。



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